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「ごちそうさまでした」
食べてる間は何も話しかけてこなかった二人。私はそれがありがたかった。
「凄く、豪快なたべっぷりだったね」
「上手そうに食べる朔さん見てたらお腹一杯になったよ」
「……」
一応、男性の前だったの忘れていました。少し、恥ずかしいかもしれない。
「でも、凄く綺麗に食べるからまた見惚れちゃった」
……やっぱり軽い。
「私はもう帰ります。相席ありがとうございました」
そう言って立ち去ろうとした瞬間、前に座っていた沖田さんが立ち上がった。
私の着物の袖を引っ張っている。
「なんでしょう?」
「また……会える?」
「……さあ。貴方と運命なら会えるかもしれませんね」
朔は二人に極上の笑みを向け、その場を去って行った。
二人は去って行く朔の背を見つめることしかできなかった。
‐*‐
朔が去って行った後も二人はまだ甘味屋に居座っていた。
「なぁ総司、俺あんな女、初めて見たかもしれない」
「……僕は一人知ってるかな~」
「おい、沖田、藤堂!」
店の主が此方にやって来た。
「何、おやっさん?」
「さっきの姉ちゃんがお前らの分のお代も払って行ったぞ。相席のお礼だとさ」「「……」」
「京の女であんな男前な奴いたんだな」
「格好よすぎでしょ~」
やっぱり、似てる。
あの女性に――
「運命か……」
なら朔さん、僕達はもう二度と会うことはないね。
僕は運命なんて言葉信じてないから。
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