21人が本棚に入れています
本棚に追加
「父上」
二人沈黙していた時に襖が開き、兄上が部屋にやって来た。
「あ、啓か。何だ」
「……」
ちらりと私の姿を見る兄上。そしてその視線に気付いた父上。
「朔、もういい。部屋に戻りなさい」
……邪魔だと言えばいいのに。
私が部屋から出ると、兄上が話しを始めている。店のことだろう……
私も……男に生まれていれば、また立場も違ったかもしれない。
「馬鹿みたい……フフ」
私は自分の部屋に向かった。
‐*‐
「そういえば父上」
「何だ?」
「また朔に縁談の話がきています」
「……」
朔は器量も良ければ、幼い頃から英才教育を施してきたために、知的で上品な美しい娘に育った。
そんな娘を嫁にしたいと思っている輩は多い。
何度も何度も縁談を壊してきた朔に感謝してる輩も多いのも現実だ。
自分ならば彼女の夫になれる……!
と男達は順番待ちのよう。
なので縁談の話が途切れることはないのだ。
「で……相手は?」
「一橋家です」
「……」
「……」
「頼む。もう一度」
「一橋家です」
「御三卿のか!?」
「はい」
「真か!?」
「はい」
「しっ信じられん……」
「側室として……だと私は思うのですが」
「側室でも構わん!一橋だぞ!?」
「……」
朔の父は目を輝かせている。
「今度の縁談は決して他には漏らすな。朔に気付かれないように。次は見合いなどという形ではなく……」
ぶつぶつと色々と策を練っている。
啓はこうなると父はそのことしか考えないだろう、と思い父を一人部屋に残し部屋を出た。
.
最初のコメントを投稿しよう!