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‐*‐
「朔様、今夜の宴会にも必ず出席するようにとの旦那様からのお達しです」
「……また宴会?」
前回の見合いが終わってから一月が経った。最近、私はよく父上に宴会に付き合わされる。今までそんなことはなかったのに。私が宴会に行くと、纏まらない話も纏まるとのこと。
怪しいとは思うが、最近、見合いの話しはしてこないし、店のためになっていることは嬉しかった。
「今夜はとても重要な取引もあるそうですよ」
「そう……」
「では今から準備を致しましょう」
「……ええ」
私は何か引っ掛かるな、と思いながらも女中達の為すがままになった。
‐*‐
「今夜の事、決して朔に漏れていないだろうな?」
「あなた、あれだけ口止めしているのですから、気付かれているはずがありませんわ」
朔の母が父を落ち着かせている。
「しかし……そうだな。うん」
自分で自分を落ち着かせている様だ。
「啓達は先に行ったのか?」
「ええ。先方と最後の打ち合わせだと言って」
「うん。計画通りだな。流石の朔もああなっては、大人しくしているだろう……」
一月かけて計画した事が今夜、実行されるのだ。
「よし。朔を玄関まで連れて来るように伝えろ」
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