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2月の始めの日曜日
陽人と二人で、駅前の一番大きな不動産屋に入った
過剰に愛想のいい店員に促され、並んで座る
「新婚さま向けの物件で宜しかったですか?」
手を揉み擦りしながら言った
「えぇ!?」×2
二人のびっくり声が重なる
「ちが、違います!星蘭大学に近くて、○町に近い部屋を…」
「えっ?大学ですか?」
「はい…」
「学生結婚ってヤツですね?おめでとうございます♪」
どうしても新婚カップルにしたいのか?
「オッサン!聞け!!結婚はまだ先だ!今は、大学に近くて○町に近い、女向けの独身マンション探してんだよ!!さっさと出せ!」
「陽人!?」
陽人の剣幕に少し黙る店員
「オッサンって…まだ35なのに……わかりましたよ(泣)わかりました!探してきますよ!!少しお待ちくださいませ…」
立ち上がり、奥のファイルをいくつか探し始める店員
「あんな言い方しなくてもいいじゃない!」
「話が進まねぇから………。でもさ!俺達新婚カップルに見えるみたいだな♪」
「もぅ………。ちょっと照れるね♪」
見つめ合って笑った
「この辺なんかはどうですか?」
「うーん…俺のとこと近くていいけど……近くに男子校があるからなぁ…」
「男子校になにかあるの?」
「あっ?当たり前だろ!男がうようよいるような町に住まわせられっか!」
(えぇ!?なにそれ…)
「却下だ!次!!」
それからも次々となにかと文句を付け却下、却下と減らしていく
「そんなに条件出したら見つからないよ…」
自分が住むところなのに、選ばせてもらえない…
ある意味お父さんより厄介かも…
「ハァ…」
思わずため息が零れた
「おい!夏希もちゃんと見ろ!!」
「………わかりました……」
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