涼しい木陰

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「わっ!?新条先輩!!いたんですか?」 いきなり声をかけられビックリした。  独り言を聞かれたかと思うと頬が熱くなった。  恥ずかしさを誤魔化すように  「な、なんかシーツの波って感じで綺麗だと思いませんか?」 ベンチから立ち上がり歩み寄ってくる先輩、シーツを少しだけかきあげすぐそばまで来た。  「綺麗だと思う…」 私の問いかけとは違う意味があるかのように先輩の目線はシーツの波ではなく私を見ていた。  「……」 数秒間か…見つめ合う時間が続いた。  「…あ、あの…」 黒い瞳に吸い込まれそうになり言葉もつまる。  「フッ(笑)」  と先輩の唇にかすかに笑みがこぼれた。  「顔…赤い…」 そう言われ更に熱くなる自分の顔がわかった。  「…先輩…からかわないでください…」 「そんなつもりはなかったが…」 先輩の顔を見上げる。  (ん?何かいつもと違う?) 「あの…今日の先輩って、いつもと少し違うような…」 「あぁ…これかな?」 と右手の中指でかけていたメガネを押し上げた。  「あ!?メガネ…。先輩メガネしてたんですか?」 「あぁ…本を読む時だけな」 そうなんだぁ…と思いながら見つめた。  (すごいかっこいい…似合ってる…) そんなこと考えてるとこに  「夏希ちゃん♪終わった?」 とノブさんの声が聞こえた。  振り返り返事をして、また新条先輩の方を振り返ってみた時にはもう姿はなかった。 .
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