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(暑苦しい…)
案内された部屋の真ん中に座らされ、周りを囲むように座する、男達。
ただでさえ、外からの熱気に挫けてしまいそうなのに、難しい顔をした面々に、所狭しと囲まれれば、高い人口密度に室温も上がる一方。
「あの…何を話せば?」
解放されるのか。
苦い顔の鈴鹿に、バサッ。放り投げられる、傷んだ制服。
「これは何だ?お前、何者だ。」
警戒されている。口調と、疑うような視線で分かる。
鈴鹿は苦笑しながら、懐かしい制服に手を伸ばす。
「これは、‘制服’ですよ。この時代でいう着物。未来の日本の衣類。」
はあ?皆して首を傾げる。
「私は、姫宮 鈴鹿。未来から迷い込んでしまったんです。」
鈴鹿の言葉を、鼻で笑い飛ばす、一人の男。
「未来だ?怪我より頭を心配するか?」
上から目線の、傲慢な態度・口調。
「ああ、あなた、土方さん?‘鬼の副長’近藤局長よりも、器が狭く見えるのは、組を守る為・近藤さんが大好きで、仕方ないからですか?幼少期は…奉公先でホラレかけたとか、色気付きすぎて妊娠させたとか…」
ペラペラ。喋る鈴鹿に、人の鬼は赤くなったり青くなったり。
ただ、最後の方は我知らぬ顔だ。
「あ、近藤さん。その刀、‘虎徹’じゃないですよ。多分。大名差しみたいな高級品、一介の武士が買えるものですか」
それには近藤は青くなり、クク。小さく笑いを堪えられなかった男が一人。
きっと、偽物だ。と薄々知っていたのだろう…目利きの出来る人物。
「あなた、斎藤さんですか?試衛館の方ばかりでは、無かったんですね」
切れ長な目の男は、直ぐに能面のような表情に戻り、
「知っているなら、他言してくれるな。」
自分を詠ませまい。思っての能の面か。
釘を刺されては仕方ない。
「ここに来るまでに、佐之さんて居ましたよね?」
男はさも面白げに、俺だ!手を挙げる。
「切腹に失敗した原田 佐之助さん。自慢話なんですか?失敗したのが格好悪いような気がしますけど。」
鈴鹿の言葉に、傷付いたように項垂れる。
分かりやすい人間だ。
「俺が運んで来てやったんだぞ…」
呟く原田に、鈴鹿は笑顔で、
「それは口が過ぎました。申し訳ありません。ありがとうございます。」
畳に指先を揃える。
その様が、公家の姫を思わせるように優雅で、目が釘付けになる。
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