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まだまだ続く鈴鹿の話。
「山南さんは近藤さんとの試合に、敗けたとか。」
それに、胃が…と、苦い顔をする男が。
成る程、
「鬼の土方・仏の山南。とは、的を射ていますね。気に病みすぎるから、胃を患うんです。」
あとは…覚える限り、自分の記憶を口に並べる鈴鹿。
「沖田さん、は勿論居ますよね?‘試衛館の白眉’撃剣の、沖田 総司。」
鈴鹿に、へえ。興味津々な笑みを浮かべる青年。
皆、反応で誰だか分かってしまう。
「自分よう知っとんなあ」
関西弁に顔を向ければ、座っているのは、
「あの時の黒装束!と、ゆう事は、組の監察。大阪出身の、山崎 烝。香取流棒術の使い手。」
「ところで…芹沢 鴨は、もう死にましたか?」
暗殺された、もう一人の局長。
その言葉に、場が一瞬にして凍てつく。
(本当に、分かりやすい。)
時を読む鈴鹿に、もういい。ストップがかかる。
土方だ。
「分かった。そこまで知ってて、嘘は無いだろう。」
信用して貰えたか。けれど、穏やかではない空気。
土方の視線が、氷の刃のように突き刺さり、痛む。
(芹沢話は不味かったかなー)
「あー…っと、ここは女人禁制でしたよね?もう良いですか?」
出ても。
言いながら、笑顔で立ち上がる鈴鹿。
ヒヤリ。
その首筋に、微々たる殺気を混じらせ、短刀をあてるのは。
「実際、長巻は使わないんですね、山崎さん。」
山崎だ。
「ほこまで知っとる人間を、そう易々と帰せるか?」
それもそうだ。
情報は、時に命よりも大事。
『御前、如何致そうか。』
『姫。八つ裂きにして殺ろうぞ。』
鈴鹿の影から、使役鬼の女らが殺気立つ。
「お下がり。」
鈴鹿の一声に、惜しみながら、黙り込む女達。
「困りましたね。出して頂かなければ、死にますよ。…皆さん。」
自分ではなく。
集う兵者が、死ぬ。と。
鈴鹿の言葉に、その場に居た全員が、声を上げて笑う。
「そんな事、有り得ない。」
馬鹿にされている。それくらい、分かる。
女、だから。見た目。
鈴鹿は目を細め、その様を嘲笑った。
「思い上がるのは、感心出来ぬ。」
言い、
「山崎よ。妾に刃を向けるのは、得策か?」
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