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「なぁ、聞いたか?あの噂。」
「噂?」
「裏町の一区画が突然消えたらしいぜ。」
「は?どういう意味だそりゃ…」
「今は治安維持局が出張ってきやがったから俺も詳しくはしらねぇけどよ。最初にチラッと見た限りでは、なんかの魔法が使われたんだと思うぜ?建物の半分が残ってるのに半分は消えてるとかだったし。」
「マジかよそれ。ちなみによぉ、その消えた一区画ってどの位の範囲だったんだ?」
「維持局の奴らが誰も通さねぇのは1キロメートル四方位なんだけどよ。」
「なんだそのバカでかい範囲!?禁忌魔法でも使ったんか!?」
……………ヤバい。
俺は今、商業の都、〝ミスティア〟の裏道をとぼとぼと歩いてるわけなんだが……
「ちとヤリ過ぎたかねぇ…」
顔の表情が引きつるのが止められない。
「はぁ……調子乗った。」
裏道にポツポツとたむろしてる奴らの会話が、俺のか弱~い心にグサリときたわけで、すんごい反省してます。
…………ん?なんか視線が…
奇異なものを見るような視線を感じ、周りの気配を探ってみれば…いるわいるわ。
なんか、みんなこの刀のことが気になってるみたい。
まぁ、今時珍しい代物だし、もしかしたら高く売れるかもだしなぁ。
俺は第二の〝消えた裏町〟を出さないためにも、裏道から表通りに面した場所へと歩を進めた。
「…この忌々しい刀が。」
腰に挿した一振りの真っ黒い刀の重みを痛感しながら喧騒の中へと踏み入った俺は、久しぶりの賑やかな声に自然と笑みがこぼれた。
「………。」
無言のまま、大通りの端を歩き続ける。
こんだけ人がいりゃあこの刀に気付くやつもいないよな。
木を隠すにゃ森の中。人を隠すにゃ人垣の中。刀を隠すにゃ……………まぁ、人垣の中でいいや。
「…にしても、腹減ったなぁ。」
ここ数日、まともなもんを食った覚えがないのは、俺の記憶がイッチャッタからではないだろう。
チョンチョン…
「んぁ?」
肩に触れられた感触がしたため振り返ったが、腹が減っていたためか、半眼のままになってしまった。
…俺、今すっごくやる気なさそうに見られてるんだろうな。
そんなふうに思いながら振り返った先には……
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