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「はぁ~あっと!」
訓練場を囲むように群生してる芝生の上に座り込み、視線を前に固定する。
「訓練中かぁ…」
ライトアーマーなんか着込んで、動きにくくないのかねぇ。
注)ライトアーマーは動きやすさを重視した装備です。
ふ~ん。1対3で戦わせてんのか。まぁ戦場ではあり得ることだもんなぁ。
っと、ふと1人でがんばってる奴の顔を見て視線が止まる。
わぉ。まさかの女かよ。ショートカットだからわかんねぇ~。
「兵士としてはいい動きだけど。」
1対3という不利な状況にありながらも、ギリギリ互角にもっていってるところをみる限り、実力の高さを伺えるってもんだ。
「詠唱の速さが相手方の倍以上だからこそできる技ってとこか。」
でもなぁ、そんなにやたら滅多に打ち続けると魔力がなぁ…
そんなことを思っていると、いきなり女の方が魔法を放つのを止め、避けに徹し始めたではないか!
ほれ見ろ。やっぱりな。さすが俺だ。やっぱり俺だ。
…言っとくけど、ナルシストじゃねぇよ?
「そこの人!避けて!!」
あん?
多分さっき避けてた女の声だろうな。そいつの声で現実に引き戻された俺の眼前に氷の棘みちょうなのが迫ってるではないか!
う~ん。これって下位魔法だよなぁ。込められた魔力が僅かだし。いや、でも待てよ。実はフェイクで上位って可能性も……
本気で悩みだし、避ける素振りを見せない俺に対して焦りを帯びた声が聞こえてくるのは気のせいではないっぽい。
何だよ、まったく。他人が考え事してるってときに。
チン…………
その時、訓練場にいた数十人の耳に、いやに響く音がとどいた。
「え?」
氷の棘は男の前方約1メートルの所で粉々に砕け散っていた。
そう。粉々。もとの凶器のように尖った形状は微塵も存在していなかった。
「ん~~っ!っと。下位魔法だったかぁ。」
その場で背伸びをした俺の予想は当たっていたようだ。
「だ、大丈夫でしたか?」
驚きを隠せないまま、そう言って走り寄ってきたのは、先程校舎の中に消えていったあの女ではないか。
てめぇ!見てたんならどうにかしろや!俺は一応まだ客人なんだぞコノヤロゥ。
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