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〝天界〟と〝冥界〟。
それがロイが発見した世界の名だった。
現界を人間が支配しているように、天界は〝天使〟が、冥界は〝悪魔〟が支配している。
天使や悪魔についての説明は………………まあ、いらないだろう。姿形は数多の文献に出てくるものとほぼ変わりはないのだから。
人間の身でありながら、〝次元〟を超えてやってきたそいつを、天使と悪魔は危険視した。
イレギュラー………だからこそ、早くもとの世界へ帰って欲しかったからこそ、手土産として〝魔法〟を与えた。
………だが、天使と悪魔はある点において見誤っていた。
それは魔法を扱える素質を持っていたのがロイだけではなかったこと。………そして、人間の〝可能性〟。
…ロイが天界と冥界に訪れてから100年。
久しく現界の様子を見ていなかった天使と悪魔は、奇しくも、同時期に現界へと訪れていた。
そして、人間達の進化に驚愕した。
自分達より遥かに能力的に劣っていた人間。勝っていることと言えば種族の数だけだった。……が、数百年見なかっただけで、人間は魔法を独自に使いこなし、自分達の脅威になりうる存在になっていた。
その人間の進化がトリガーとなったのだろう。今までは暗黙の了解として、天使と悪魔は争わないことになっていたはずだったのだが、それを両者が同時に破棄。
天界と冥界は戦争状態に突入する結果となってしまった。…そして、天界と冥界に挟まれるようなカタチで存在していた現界をも巻き込む形で戦争は肥大化していった。
――これが後に語られることになった、〝三界大戦〟の幕開けであった………
――太陽暦327年。
三界大戦が始まってから、127年もの年月が経とうとしていた。
当初は、事態を飲み込めず、遅れをとっていた現界も、数にものを言わせて戦況を〝三強〟の膠着状態へと変化させていた。
……戦争は激化した。なんら罪のない天使や悪魔、人間を戦禍に巻き込み、そして、大地は紅く染まっていた。
だが、それから3年。太陽暦330年となった現在、大戦は、一時の終結を迎えていた。
…………ある〝者〟の登場によって。
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