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紹介が遅れた。
先程から俺に暴力を振るったり暴言を吐いたりしているこの人物は、我が家の長女である菊咲 実咲(きくざき みさき)だ。
俺のことを兄貴とか言ったり、男の俺を平気で殴り飛ばしたりするような、なかなかに男らしい性格をしている。
ご覧の通り、兄を全く敬ってない可愛いげのない妹だ。
まあ、それはさておき……
(さて、こういう時なんて言うのが正しいのだろうか??)
俺は下手をすると遺言やら辞世の句になりそうな言葉を選んでいた。
勿論、こんなところで死ぬつもりなんて毛の先ほどもないので、コイツをどうにか刺激せずに場を収めることのできる言葉を探す。
言葉の選択ミス=死亡
「…………」
嫌な汗が頬を濡らす。
お、落ち着け、落ち着くんだ。落ち着かなければ俺の命が危ない。
少し深呼吸して落ち着いたところで、俺は自分の生死を決めるその言葉を発した。
「なぁ、実咲」
「……なによ?」
「ワイシャツもスパッツも着てんだからセーフじゃん」
「……いっぺん地獄に行って乙女心を学んで来なさい!このクソ兄貴!!」
地獄を見た。
どうやら俺は、選択をミスっちまったようだ。
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