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「そなた…仮にも上位のモノノケだろう。その、強すぎる我欲をどうにかできぬのか」
紫眞様が呆れておられます。
少々私情に走り過ぎてしまいましたか。
「妄想が暴走致しましたようで」
深々と頭を下げ、上目遣いで紫眞様を見上げますと。
「…もう良いわ。支度をせい」
すぐにお許しを頂けるのです。
ワタクシ、腹黒ではございませんよ。身も心も真白き小狐なのです。
「失礼致します」
紫眞様のお美しいお髪は腰までございまして、絹の様に滑らかで(櫛を用いて解く程の必要が到底あるとは思えませんが)、数回櫛を用いますれば、下方一ヵ所でお縛り致します。これでお支度は完了するのでございます。
「黒-クロ-、白-シロ-」
「あーいー」
呼ばれてお側に控えます、黒星-クロホシ-、白星-シロホシ-は上位モノノケの猫又にございます。
館でお仕えするモノ共は、大抵がモノノケの類いでございます。紫眞様の身の回りのお世話に、お務めのお手伝い、細かな雑務等、それは多種多様なお手伝いを ワタクシ神狐の白狐・左近を筆頭に、猫神級の猫又・黒猫の黒星、白猫の白星、中位から下位の名も無き多くの猫又共が、させて頂いているのでございます。
「そろそろ時刻になりそうだ。…書巻を」
座り直された紫眞様の後ろには、山の様に積まれた書巻がございまして、この心迷館に現れるモノの悩みが記されてございます。それを黒星、白星が抜き取るのでございます。
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