プロローグ

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さっぱり訳が分からない。 改めて周りを見渡すと、コンクリートの壁に囲まれた部屋のようだ。広さは学校の教室ほどか。 窓は一つも無い。 天井には蛍光灯があるが、部屋の広さに対して少な過ぎで、薄暗い。 その中程に椅子が横並びになっている。 椅子の数は7つ。 拓也を含めて7人が座っている。 その前には横幅3メートルはあるだろう大きな液晶モニターがある。 全員が巨大モニターに向かってゆるいカーブを描いて並んで座っている状態だ。 「誰かー!おーい!」 相変わらず右の中年は喚きちらしている。 「ちょっとオッサンうるさすぎってゆーかー」 左から2つ目に座っている女が面倒くさそうに言った。 高校生くらいか。金髪パーマでいかにもなギャルのようだが、やはりマスクで顔はわからない。 「騒いだってどーもなんねーじゃん」 「何だと?お前馬鹿か!この状況わからないのか?拉致されてんだぞ?!」 と中年が唾を飛ばす。 「マジの拉致ならとっくにメチャメチャされてるっつの。ツレがマワされた時言ってたし。こんなユルい拉致ねーし。テレビか何かじゃね?」 ギャルはこの状況には大して動揺していないようだ。 「ユルいからチャンスなんだよ!ちょっとは考えろよ!今逃げなきゃ殺されるんだよ!誰かー!誰か出てこい!おーい!」 中年はパニック状態だ。 「俺がさっき起きた時からずーっとこれだよ。あのオッサン」 と左の男は肩をすくめた。 「拉致だったらこっそり脱出しなきゃだよな。騒ぐのは逆効果じゃねえ? 意味わかんねーよ。テンパリ過ぎ」 男をよく見ると、手足が長く、引き締まった体型をしている。 座っていて分かりにくいが背も高そうで、スポーツマン的な印象だ。
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