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大変な事がありました。
困ったちゃんが宝を無くしてしまったのです。
いえ、
無くしたのではありません。自ら海辺に放り投げたのです。
私の心は歓喜の声をあげます。
あれほどにまで私を許し苦しめた困ったちゃんの宝。
私は震えます。
しかし酷く静かな流れです。
私の悶え死にそうな心情と、困ったちゃんの無気力。
私はやはり欲望を伸ばします。触覚です。
青い、赤い空から私が落下してゆくのがわかります。
ある日、私は困ったちゃんをデートに誘います。
私は幾つものフォーク、ナイフ、スプーンを用意します。
困ったちゃんは、私のそれらの私の武器全てをハラリハラリと見事に食らいます。
私は苦痛を求めます。しかし困ったちゃんはそれをも笑い受けます。
私はあまりの苦痛に横腹の痛みを感じます。
笑います。
これらが私の肉を作る事を知ったからです。
困ったちゃんは宝を無くしました。
それはもうこの世に生まれてこないから宝なのです。
私は宝になろうとは思いません。
宝石でも、ハサミでも、トマトにもなりません。
私のグラフは平行を極めます。
末期にも交わることは無いのかも知れません。
だからこそ、その困ったちゃんの袖口が恋しくて仕方がないのです。
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