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青年は肩をすかしてそう答えた。
そう、確かに中途半端だ。私は。
抱えている長刀をギュッと握りしめて目を細める。
青年は私を見下ろしてフッと微笑を浮かべると街灯の当たらない暗い闇の奥を見据えた。
「――――あぁ、ほら。きたぞ」
言われて同じところを見れば途端辺りに腐臭が漂い始める。
肉の腐ったような生臭さに思わず眉を寄せて息を止める。
夜はゾンビの活動がもっとも活発になる。まぁ日の光の元で活動もするけれど。
朝は魔族に狙われて、夜はゾンビに狙われてプラス魔族にも狙われて。
「休まる日がほしい・・・」
切実に。ホント心の底から切実に願うし希望する。
そのためならなんだってしちゃう勢いで。今なら逆立ちして世界一周しちゃうぐらい。
ノロノロと立ち上がり左手で長刀を持ち、右手で額の汗を拭う。
いつの間にかさっきの青年はいなくなっていて、街灯に照らされるのは私一人。
またどっかで傍観してやがる。
「嫌だな―嫌―あ―臭い―臭い臭いし臭すぎるしあ―ああ―イーヤー」
増す腐臭に嫌だ嫌だとぶつぶつぼやきながら鞘から長刀を抜く。
スラリ、と現れた刃に街灯の光が反射する。
この3日間ひたすらゾンビや人間を切ってきたのに、この長刀は錆びるどころか汚れ一つ付かなかった。
いつまでも変わらぬ銀の輝きに一瞬目眩を感じ、そっと視線を暗闇へと戻す。
「なんでただの女子高生が銃刀法違反してんだろ」
いつの間にか視界に映る無数のゾンビに背筋を冷たい汗が伝う。あ―くそ臭い怖い。
ギュッと柄を握りしめて適当に構える。あぁくそ手のひらに汗が滲むあぁもう怖い臭いんだっつの。
「・・・・・やっぱり死んだ方が楽?」
ふと漏らした呟きがまるで合図かのように一斉にゾンビたちが襲いかかってきた。
私は全身から吹き出す冷や汗に薄ら寒い思いをしながら握りしめた長刀をゾンビたちへ向けて振り上げる。
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