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大きく深呼吸して、交差点の向こうに目を移した時だった。
あ、いた……。
オープンテラスのカフェに優雅にくつろぐ数人の気品ある女子大生。
テーブルを囲む女子たちの中央。
長い黒髪を耳にかける仕草をした女の子は、
細く白い手でけだるそうにコーヒーのカップを取った。
あの動作のすべてが、素敵。
まるで高貴な猫のような雰囲気。
あのコの名前はまだ知らない。
けど、きょうを境にメアド交換。
同時に名前もお互い知ることになる!
……うまくいけばだけど。
急に不安になって、横の路地へ入った。
「前から気になってました。
さしつかえなければ、
メールアドレスを交換していただけませんでしょうか……。
堅いか。うん」
小声の予行練習をしていると、
肩を叩かれて跳ね上がった。
「ハッハッハッ。
純だねぇ~」
黒いリバプールハット に目元まで覆うサングラスをかけた長身の男。
低い笑い声に聞き覚えはない。
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