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私立四葉学園には一つの伝説があった。 入試最下位で入って来た人物が、二学期には特進クラスに入り、そのまま卒業した。と言うものだ。 ―しかし全く平凡な俺、新谷志貴(アラタニ シキ)には、そんな事ちっとも関係ない事で、ましてや今現在、保健医(しかも男)に壁まで攻め立てられている。そんな現実、理解できるはずもない。 「ー…えっと、せ、先生ぇ?」 「ん?」 「この状況は一体何なんでしょーか?」 「んーー?何だろうなぁ」 ―…本当に、何なんだ。 数分前… 入学して一ヶ月も経つのに未だ道を覚えられない。 友達とははぐれたきり。携帯は…鞄の中。食堂に行くはずだったから、腹は減るし、実際…限界…。 「もォ…駄目……」 ふらついた俺の身体は、そのまま冷たく固い床に迎え入れられる予定だった。 が、 温かいし、柔らかい。 いや、柔らかいと言うより引き締まったー? ゆっくり顔を上げてみるとそこには…整った、男の、顔…? 「…誰?」 「入学式は寝てたのか?」 「え、あーーー」 「寝てたのか。」 「ー…はい」 「フン」 さして興味がなさそうなのに、男は志貴の身体をぺたぺたと確かめるように触れる。 正直気持ち悪い。 空腹で力の入らない身体を叱咤して相手を押し退けようとした。 「あの…やめっ」 「体調が悪い訳ではないな。睡眠もたっぷりとってるだろうし。」 授業中に寝ているとでも言いたいのだろうか。 取り敢えずコレは触診だったようで、つまりこの人は保健医で…全然離れないのは何故だろう。 ―もう殴っちゃおうか。 志貴は保健医を仰いだ。 ぐうぅぅぅ。 「…なるほど。」 今までなんとか押さえ込んでいたが、とうとう鳴ってしまった。 ―俺の腹。 睨みを利かそうとした目は下を向き泳ぎだす。 徐々に顔に赤みが差し、わたわたとしだした志貴に、目の前の男は呟いた。 「可愛いな。お前。」
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