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「アリス様~っ
アリス様、どちらにいらっしゃいますか~?」
少し遠くから、トランプ兵の声が聞こえる。
不思議の国の姫である、わたしアリスは
お城の中で一番大きな木の陰に隠れているから見つからない。
「アリス、トランプ兵が探しておりますぞ」
「いいの、内緒にして?」
わたしよりもずっとずっと長生きしているその木が、小声で言う。
それでもわたしは木を見上げて、口元に人差し指を立てた。
彼の名前は『不思議の木』。
わたしにとって彼は、頼れるお祖父様のような存在。
女王様にも王様にも大事に大事に育てられ過ぎたわたしは、世の中のことを何も知らない。
そう
「恋」も
わたしは知らない。
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