1*夢と王子さま

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「アリス様~っ アリス様、どちらにいらっしゃいますか~?」 少し遠くから、トランプ兵の声が聞こえる。 不思議の国の姫である、わたしアリスは お城の中で一番大きな木の陰に隠れているから見つからない。 「アリス、トランプ兵が探しておりますぞ」 「いいの、内緒にして?」 わたしよりもずっとずっと長生きしているその木が、小声で言う。 それでもわたしは木を見上げて、口元に人差し指を立てた。 彼の名前は『不思議の木』。 わたしにとって彼は、頼れるお祖父様のような存在。 女王様にも王様にも大事に大事に育てられ過ぎたわたしは、世の中のことを何も知らない。 そう 「恋」も わたしは知らない。 .
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