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「…俺も、同じ事、言おうと思ってた。」
なんとなく、なんとなく分かってはいたんだ。
だって、何年一緒に居ると思ってんの、俺ら。
だから、お前も分かってただろ?…大竹。
でもな。
「…三村…?」
お互い通じ合ったはずなのに、なんだか不安そうなお前。
そりゃそうだ、分かってんだろ、俺の事。
…何年も、飽きも怒りも過ぎ去るぐらいに俺の相方やってんだから。
「ごめん、大竹。俺、大竹のこと…好き、だ。けど。」
お前が眼鏡を触ったのを、なんとなく感じた。
癖だもんな、こういう時の。
「だけど、俺、大竹とは…そういう風になる、勇気が無い。」
沈黙。
お互いに、言葉が無い。
一人だけ居た店員はさっき裏方に入っていったから
ある意味俺ら二人しか居ない店の中での、沈黙。
「…んだよ、それ。」
「意味、わかんねぇよ…!三村…!」
ようやく口を開いたお前が、ガタンと盛大に音を立てて立ち上がって髪をガシガシと掻いた。
そりゃ、そうだ。
俺だって。
(俺だって意味わかんねぇよ…)
でも、俺には色々足りないんだ。
ポツポツ、ポツポツ、ザァザァ。
いつの間にか降り出した雨が、ガラスに打ち当たって店の中に入る事なんか無く流れていく。
まるで、俺ら二人のように。
「もう、知らねぇ…!勝手にしろ、馬鹿野郎!」
ガシャン。
水の入ったグラスと金を俺に投げつけて、大竹は店を出た。
「お客様…、大丈夫、ですか?」
騒ぎを聞き付けた店員が、さりげなくタオルを出してくれたが
それを断って、支払いを済ませて店を後にした。
大竹から投げ付けられた金は、レシートに挟んで財布にしまい込んだ。
(あぁ、雨だ。雨だ…)
店を出れば、ザァザァと降っている雨が、当たり前に俺には染み込んで
さっき被った水と混ざって服を濡らした。
(こんなふうに、混じって一つになれたら良かったのに。)
馬鹿な俺は、考えて、考えて、考えすぎて。
逆上せた頭を冷やすように、車に背を預けて、雨に打たれた。
ガードレールを取っ払って、ぶつかりにいく勇気があれば
回り道なんかしなくて済んだのに
どうして俺は、諦めて歩みを止める事しか選ぶ選択肢を見つけられなかったんだろう
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