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「もう、走っていくこと無いんじゃない?お互い歳なんだしさ…」
よっこらしょ、と実に年相応な事を言いながら俺の隣に座った。
俺は、やっぱり気まずくて
でも何も言わない訳にはいかなくて。
「あの、俺、さっきの…」
「さっきのアレ、見たでしょ?」
俺が言ったのと被せるように優しく内村さんが言った。
やっぱりその口元には笑みを携えたまま。
どこか背筋をピン、と張らなければいけないような恐怖が空間を支配した、気がした。
「あれさ、俺が言った事なんだ…」
ぽつぽつと喋り出した内村さん。
でも俺はそんなの聞きたくなくて。
「お、大竹も内村さんのこと好きだったんだから、いいじゃないですか!あ、俺、誰にも言わないんで、大丈夫です…失礼しますっ!」
一気に内村さんを見ずに言いたい事だけを投げつけて
俺は立ち上がった。
「…待って…!」
ぐい、と手首を掴まれて思わずバランスを崩す俺。
「…うち、むらさ…?」
バランスを崩して倒れた先は内村さんの腕の中で。
なにがなんだかわからなくなって、とにかく早く立ち上がらなきゃ、ただそれだけで。
「ぁ、の、すいませ」
「三村。」
また、内村さんによって言葉は遮られて。
さっきよりも力のこもった腕の中で内村さんの声がが俺にゆっくりと落ちてきた。
「…俺が好きなのは、三村、お前だよ。」
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