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「うちむらさーん…」
いつも以上に覇気の無い声で、俺を呼んだのは
「竹ちゃん、どしたの?」
さっきの片割れ、大竹一樹。
「あの、ひっじょーーに話し辛いんですけど…」
変に芝居がかった態度で話し出した大竹を、さっきの三村と同じように手招きで近くに呼べば
同じように素直に隣に腰を下ろして喋り出した。
「あの、三村の、ことなんですけど…」
…あぁまたか、と、ちょっとデジャヴを感じて小さくため息と含み笑いを吐き出せば
大竹が不思議そうな顔をしてこっちを見るもんだから
なんでもないよ、と続きを促してやると。
「なんですか、変なの。…まぁ、この前なんですけどね…」
ちょっと失礼な事をさらりと言ってのけ、
さっきの片割れとは違ってゆっくりじっくり喋り出した。
…………
…あぁ、大竹と内村さんがなんか話してる。
(なぁに話してんだろ…)
楽しそうだなぁ、と考えてズキリ。
胸の中の、何処とは言い難い場所がチクチクズキズキ痛むのを感じた。
さっき自分が話した内容を考え直してまたズキリ。
いつもなら図々しく割り込んでいけるのに、さっきのも有って行く勇気が無い。
『三村は大竹の事が好きなんだね。』
何時だかふわりと柔らかい笑みで内村さんが言ったそのことばを思い出して
今日一番の痛みがまた胸を襲った。
(好き…うん、好きなんだよ…)
気付けば限りなく手元まで迫っていた煙草をぐしゃっと揉み消して、ため息を一つ吐き出した。
…あぁ。好きすぎて胸が痛いなんて
誰が始めに気づいた事なんだろう。
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