23人が本棚に入れています
本棚に追加
「…よす。」
内村さんのところから戻ってきた、
というかただ単にこっちにきた大竹が俺の目の前に座った。
「おはよ。」
「ん。」
さっきから姿は見ていたけどこうやって顔を合わせるのは今日初だなぁ
なんてぼんやり考えてる場合じゃないんだよな、俺。
さっき内村さんに言われたばっかなのに、なんでこうも抜けてんのかなぁ、俺。
(ちゃんと、言わないと。)
「あ、そだ。」
「うぇっ!あ、な、なに?」
人がせっかく覚悟を決めた所で大竹がいきなり話しかけるから
変な声出ちゃったよ。
「んだよお前、いきなりきもちわりぃ!」
ケラケラ大竹が笑うから、なんか恥ずかしいやらなんやらで。
でも大竹の笑顔が見れたからいいやー、
なんて、結局俺って単純なんだよな。
「うるさい、んで、なに?」
このままほって置いたらいつまでも笑い続けるだろう大竹に先程の続きを促す。
そしたら、急に真剣な顔になって俺のことじぃっと見て
…なんだよ、なんかちょっとドキッとしちゃったじゃんかよ。
「…さっき内村さんが言ってたんだけど、」
…まぁ、そのドキッとは、違う意味で当たるんだけど。
そんなことこの時の俺は知ることが無い。
「俺に話しが有るって、何?」
………………………
(なんか、疲れちゃうなぁ…)
二人が何か話してる。
それもなんだか深刻そうな面持ちで。
さっきの今で、なんだか俺も眉間にシワが寄ってきた。
(…はやく、くっついちゃえよ…お前ら。)
二人から離れた場所で、でも視界に入る場所で。
俺の紫煙を吐き出す音だけがやけにハッキリと聞こえて
俺の気持ちも知らないで、なんてのも混ざった複雑な感情やらなにやらが
全部ずっしりと肩に重みとしてのしかかったのと一緒に
もどかしさとちくんと胸が鳴った気がした。
それなりに年をとっても、こういう気持ちばっかりは中々慣れるものじゃないなぁ、なんて。
俺の好きな二人が、どうにもうまく噛み合わない。
(あーぁ…年は取りたくないな…)
眉間のシワを指でグイと伸ばして、俺はタバコの空き箱を捨てた。
触れられない、見えているのに。ガラスケース越しのようだ。
それを割る勇気も取り払う勇気も、俺には無い。
それも、きっと、一生。
……………………
「今日の収録終わったら、話有るんだけど、付き合えよ。」
最初のコメントを投稿しよう!