これほどの、愛を。

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ちょっとばかり予定より長引いた収録が終わって 三村の運転する車に揺られること早20分。 (…なんだってんだよ…) 話しが有る、だなんて 近年稀に見るあんな真剣な顔で言われたら断れる訳もなく 仕事終わりに三村の車に乗り込んで どこに行くかも分からないまま揺られて。 もう時間も深夜2時になろうとして 半分寝かけてた頃に、ようやく車が止まった。どうやら着いたらしい。 「着いたー…ってなに、寝てたの?お前!」 「…ぁ、いや、寝てたってかね、こー、瞼を休ませてたっていうか。」 「それを寝てたって世間では言うんだよ!…人が必死こいて運転してんのに寝てんだもんなー、大竹さん。」 着いて早々軽い口論まがいの馬鹿話。 拗ねてるフリしてホントは楽しんでるお前のその横顔を見ながら、俺はシートベルトを外して、少し倒してたリクライニングを戻した。 「でもまぁ、よく一人で目的地着けたよな、お前。」 「まぁーね。ホントは運転してるときお前に道聞いたんだけど。…聞いてた?」 「聞いてねぇ。」 「やっぱな、この眠たがり。」 楽しそうに笑いながら同じ様にシートベルトを外して車のキーを外すお前。 「…まぁ、入ろうぜ?」 バタン。 両側のドアが同時に閉まった所でようやく目的地を見れば。 「…なにお前、腹減ってた訳?」 見慣れたチェーン店のファミレスの看板が 暗く静まった街の中に煌々と光りを注いでいた。 「んー、ちょっとね?…この時間のこの店、あんま人居ないからちょうどいいかなって。」 そう言いながら カランカラン、とちょっと壊れかけなのか、間抜けな音の入店音を鳴らしながらお前がドアを開けて店に入っていったのに続いて俺も店に入る。 いきなり客が来たことに驚いて、今さっきまでだるそうな気配を漂わせた店員の 妙にシャキッとしたいらっしゃいませを聞き流しながら お前がまるでお決まりのように、角のソファー席に腰掛けた。
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