とある夜

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「それは誰にでもそう云ってるだろ?」 傷顔の男はニヤリと笑いながら言う。 『えぇ』 否定せずに女もまたくすりと笑い答える。 「何時になればオレのもんになるだろうな」 傷顔の男は女を抱き寄せ語るが、女は動じることなく傷顔の男に擦り寄り 『いつでも貴方のものですよ』 そう告げると傷顔の男の頬に触れた。 「嘘だろ?明日には別の野郎に抱かれるくせに」 そう ここは遊郭 傷顔の男は"客" 女は"遊女" 歌舞によって客を楽しませ,共寝をすることを業とした女である。 明日になれば別の客が来る…そういうことになるのは傷顔の男は解っていた。 『私を好いてくれる方が私は好きなの、ただそれだけですよ』 女は真剣な眼差しで傷顔の男に言うともたれ掛かる。 「明日は誰だろうな?」 もたれ掛かる女を抱き抱え、傷顔の男はあれこれ考え始めた。 『おそらく…軍人さん』 傷顔の男に聞こえるように告げると女は俯く。 「あぁ、明日は奴らが帰って来るからか…」 →
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