4人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは誰にでもそう云ってるだろ?」
傷顔の男はニヤリと笑いながら言う。
『えぇ』
否定せずに女もまたくすりと笑い答える。
「何時になればオレのもんになるだろうな」
傷顔の男は女を抱き寄せ語るが、女は動じることなく傷顔の男に擦り寄り
『いつでも貴方のものですよ』
そう告げると傷顔の男の頬に触れた。
「嘘だろ?明日には別の野郎に抱かれるくせに」
そう ここは遊郭
傷顔の男は"客"
女は"遊女"
歌舞によって客を楽しませ,共寝をすることを業とした女である。
明日になれば別の客が来る…そういうことになるのは傷顔の男は解っていた。
『私を好いてくれる方が私は好きなの、ただそれだけですよ』
女は真剣な眼差しで傷顔の男に言うともたれ掛かる。
「明日は誰だろうな?」
もたれ掛かる女を抱き抱え、傷顔の男はあれこれ考え始めた。
『おそらく…軍人さん』
傷顔の男に聞こえるように告げると女は俯く。
「あぁ、明日は奴らが帰って来るからか…」
→
最初のコメントを投稿しよう!