目立ちたがり屋の怪盗

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 今宵は新月。  広い敷地と巨大な庭園を有する豪奢な建物も、月明かりのスポット無くしては、不気味に浮かび上がる洋館のようであった。  確かに人が住むはずのその屋敷は、窓から漏れる一筋の明かりもなく、静謐を保っている。  そんな妖しい屋敷を覗く、男が一人。  闇夜に溶け込むかのような、黒色の衣服をまとっていた。  誘うように、試すように、しかし注意深く敷地を出入りし、慎重に辺りの様子を伺っている。  切れ長の瞳が揺らぎ、気配を探る。  あくまで静寂を保つ庭園。  それを前に見据え、やっと男は大きく息を吐き出した。  冗談のように長く伸びた足を限界までたたみ、驚異的なバネでもって跳躍する。  着地。塀の上。  先ほどの注意深さはどこ吹く風で不敵に笑い、舞台俳優の様な堂々とした振る舞いで暗闇に支配された屋敷を睥睨する。  情報通り、全ての警備は内部で行っているようだ。  面白い。  不敵に笑う。 「さぁ、いこう。 僕は『目立ちたがり屋の怪盗』。 今宵のお宝が、過去へ誘うものだと信じて……」
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