誘う手の群れ

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チキィ……チキィ……とどこからともなく音がする。 足許で蠢く蟲といい、この洞窟はヤバイと昌人は思っていたけれど、それもおかまいなしに輝彦は前へと進んでいってしまう。 時折パタパタと鳥がはばたく音がするが、暗闇の中に響くと輝彦も驚いたのかいったんは歩を止め、耳を澄まして音がなにかと聞き取っていた。 「テルよぉ、マジでこの洞窟ヤバイぜ。 そろそろ戻るか?」 歩を止めた輝彦に昌人は言った。 「いや、あそこのカーブを曲がったら戻ろう」 輝彦が言う。 洞窟全体は右にカーブをしながら続いているため、前方はなかなか思うように見渡すことができない。 そのためか輝彦は前方に対する興味が薄らぐことはなかった。 周囲は暗闇につつまれていてふたりの懐中電灯だけがなによりの頼りだった。 輝彦がふたたび歩き出す。 それに続くかのように昌人も歩き出した。
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