誘う手の群れ

　学校が終ってから昌人は輝彦と合流をした。

空はあいかわらず曇り空で灰色をしているが、幸か不幸か雨は降り出してはこなかった。

「よし、行くか！」

輝彦が言った。

「おう！」

昌人が応え、ふたりは自転車を蹴りだした。

　住宅街を抜け、緑に包まれた山裾にと向かう。

野島神社という小さな神社に自転車をとめ、そこから野島山へと登ると山の中腹あたりに御宿穴はぽっかりと口を開けているのであった。

　このあたりになると人気はまったくなく、薄暗い樹木に覆われた御宿穴前の鳥居が異様なほどまでな哀愁を漂わさせている。

　そして、鳥居のむこうには一体の地蔵が悲しげにこちらをむいて立っているのが御宿穴の異様さを一段と増すという結果に繋がっている。

御宿穴からはかすかな冷気が漂ってきている。

　輝彦を先頭に昌人は御宿穴を眺め見て、その異様さに呆然としていた。

それは輝彦も同じなのかもしれない。