同居人ができました。

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がくがくと膝が笑っている。 「ま、待って下さいよぅ…」 見兼ねた真崎が近寄って、腕を差し出した。 「掴まれ。 まだ震えが止まんないのか?」 「しっ、仕方ないでしょう!初めてだったんですから……」 「あれでも手加減したつもりなんだけど?」 「どこがですか! 怖いし、痛いし……。もう嫌(泣)」 俯いたハナの声は疲れており、本当に辛かったのだと聴覚に訴えてくる。 「…あー、悪かったよ。 次はもっとゆっくりやるから」 「……本当に?」 「本当だって。 だから機嫌直せ、な?」 優しく言われ、ハナは頷くと怖ず怖ずと真崎に手を伸ばした。 「………ちょっと、そこのバカップル。早く上がって来てくれないかな?」 頭上から不機嫌そうな声が降ってきた。 先に階段を上がり切った要である。 「俺もさ、彼女待たせてるんだよね。 寒いし、なんか居心地悪いし、とっとと帰りたいんだけど」 「ちょ、バカップルってどこらへんがですか!?」 真崎の腕を借り、ようやく昇りきったハナは、要の発言が気に食わなかったようだ。 しかし、要はさらりと返す。 「二人の会話。 あーもう。聞いてたら桜に会いたくなっちゃったじゃないか!」 その場に、荷物を降ろすと二人の脇を抜けて階段に向かった。 「おい、要!」 「俺の仕事は終わっただろ? 後は二人でよろしくどうぞー」 「要さん!?」 ちょっと待って。 いきなり二人は気まずいですってば! 二人の声も虚しく、要は「アデュー」と、言い残しただけで帰ってしまった。 「……と、とりあえず家入るか」 「そうですね…」 不安な夜はまだまだ続く。
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