携帯小説家(オリジナル・ストーリー)

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雨が真っ暗な窓ガラスにぶつかり、激しい旋律を奏でている。 わたしは一人でひざと、夜勤で帰らぬ母の面影を抱いていた。 しかし寂しさは感じない。 なぜならひざの上に開けている本が、わたしを想像力で遊ばせてくれるから。 ハラハラするような冒険の国、ピーターパンにアラビアンナイト ハーレクインの甘い恋愛、平凡な女の子のサクセス・ストーリー 人里離れた山奥には天狗が住んでいて、航海に出れば行く手をまどわす美しい人魚に出会う。 いつでも本は、あたしをこのちっぽけな六畳一間の一室から、無限の彼方の夢の世界へといざなってくれた。
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