日常の終わり -3-

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 もちろん気絶している日野が立てた音でもなければ篤志でもない。  なら他の誰が?  しかし、休憩室に生きている人はいない。それに研究員は必ず何か靴を履くはず。ならば裸足で歩くような今の音はあまりにも常軌を逸している、あまりにも密かな音だった。 -ぴちゃ。  音は一歩近づく、力なく。  だが確実な一歩。  篤志は勇気を振り絞り振り返る。  見えない。  いや見えるはずがない、急に闇に落ちた辺りにまだ目が慣れてないのだ。  見えない恐怖に肌が粟立つ。  体が硬直する。 呼吸すら小さくなっていく。  何かがいる。闇を貫く視線が篤志に降り注いるのを感じる。  死人のように生気が無い気配は優しく篤志を撫でる。  その冷たい気配に身がすくむ。 背中を冷たい汗が流れる。 -ぴちゃ 腰の付近にあった手をわずかに前に動かそうとした。 …カツ。  篤志の手がポケットの中の何かに触れた。  視線を前方から変えず、震えながら取り出し。  一瞬視線を落とす。  握られた手には星型のストラップのついた水色の携帯電話。  そうだ、明かり!  携帯と認識した瞬間、それを開き明かりを前方に向けていた。 -ガシ 「え?」  後ろから。  左肩に衝撃。 視線を移し、携帯を向ける。  それは。  やけに白く静脈血管で異常に青い手だった。
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