始まりは月が告げる

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始まりは月が告げる

 人間は霊とすぐ側にいながら奇妙な共存関係を築いていた。  霊がいる、という感覚はあっても、実際に見えるという人は少なく。事実、霊による被害などほとんど聞いたこともない。それは都市伝説のように世間の隙間で語られるだけだった。  だが、人類の繁栄と科学技術の発展により、人類は原子よりも微細な新たな素子を見つけ出す。  人が神と呼ばれる超常的存在へまた近づいてしまった。  それは『重力子』と呼ばれ、集まることで重力を感じるという全く新しいモノだった。これにより人類は重力さえも支配するための新たな一歩を踏み出した。  さらに時が経ち、進む環境破壊、進む地球の寿命は人が神の代理人として地球に君臨していてなお、深刻な問題となっていた。その頃から次第に空気中の重力子が増え始めるのがわかってきた。  はじめに起きた異変は、新種の生き物の発見だった。  見たこともなく、まったく新しい生き物。  世界では今なお新種の生物は見つかるが、それとは全く違うカテゴリーのモノだったのだ。  いや、生物とすら呼んで良いのか。  その存在の定義が正しくなされたのはさらに時を要した。  『それ』は不特定の場所に現れ、その異形により災厄を振りまく。  死すると同時にその身体も消滅する『異形』達。  その神出鬼没な異形達は、いつしか『ゴースト』または『霊』と呼ばれだす。  『それら』は重力子によって重力を得、形を持つことが判明した。  人類の見つけた新たな素子・重力子はいつしか『霊子』と呼び方が変わった。  異形への畏怖と、異形の存在  人類はその発展と共に知らない内にパンドラの箱を開いていたのか。 それとも時限式の地獄の扉が開いたのか。  『それら』は今も現れる。  これはそこから数年後の世界の話。
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