笑顔屋

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「笑顔屋?」 何だそれは? 不審に思った俺は、その屋台に近づいた。 「笑顔をお求めですか?」 少ししゃがれた男性の声だった。 フードを深く被っていて顔はよく見えないが、服装はまるでどこかの魔術師のようだ。 「笑顔なんて・・・買えるものじゃないだろ・・・」 挑戦的に質問をしてみた。 すると男はこういった。 「売れます。形はありませんが間違いなく買えるのです。床屋と同じです」 「どんな人でも・・・例えば4年前から一度も表情を見せない奴でも笑顔を取り戻せるっつーのか?」 そう、俺の頭に浮かんだのは笑わなくなった妹。もしこれが本当なら、またあいつは笑ってくれるかもしれない。 まさに藁にもすがる思いだった。
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