犬と猫と

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それが死ぬほど、悔しい。 「あで、あちぃ」 ふ、と草太の吐いた息が俺の髪を掠めた。 「うっせ、今夏なんだよ」 ふたりが接する場所が熱い。 暑いのか、熱いのか。分からなくなるくらいに。 じっとりと滲む汗も、汗ばんだ肌も。「夏だから」だけが理由ではなかったのにそれを盾にして、体が熱を持った意味をごまかす自分は限りなく滑稽だ。 言えるわけがない。 緊張してるせいだなんて。 その原因がお前だなんて。 触れる草太の体が熱を持たない分、余計に。 伝わってくる心臓の音が規則正しい分、余計に。 言えるわけがない。 (ちくしょう、かわいくねえ)  
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