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お前はちっとも俺で動揺しないんだな。
腹が立って、発作的に、衝動的に腹が立って。
小さな肩を掴んで自分から草太を引き剥がすと、いきなりのことに驚いて見開かれた瞳をまっすぐ、まっすぐに睨みつけた。
「……あで?」
「お前の気まぐれにつき合わされんのはもううんざりだ」
「あで、」
「俺はお前の犬じゃないし」
お前は俺の主人でもなんでもないだろう。
「いい加減にしてくれよ」
「、」
「お前さあ」
不機嫌な声色とは打って変わって、俺の右手を草太の右頬に重ねるときはそっと、壊れ物を扱うくらい優しく触れた。
どう思ったのか、ぴくりと反応する体さえ愛しい。
愛しくて愛しくていとしくて
気が触れそうなほど。
好きで仕方がないから。
「はやく、俺のもんになれよ」
俺の手が震えていたことに、草太は気づいただろうか?
「……あで」
俺の黒く焼けた手のひらにゆっくりと重なった草太の手は白くて、初めて会ったときのようになよなよしかった。
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