犬と猫と

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*** 初めての転校でがちがちに緊張してた俺に隣の席だった草太が言ったのは、はじめましてでもよろしくでもなく。 「お前って俺の飼ってた犬にそっくり」 だった。 「…………犬?」 「そう、ラブラドール」 去年死んだけど、と笑う草太への反応には大変困った。そりゃそうだろう。 かけるべき言葉もない。 「まあ、よろしくな」 差し出された左手は細っこくなよなよしくて白かった。言うなれば、女の子の手のように。 よろしくと丁寧にも握手を求められ嬉しそうにはにかまれたりなんかしたら、俺だって、犬と一緒にすんなとは到底いえない。ましてやここはヤツのテリトリー。俺はよそ者。 俺よりもひとまわり小さなその手に自分の手を重ねて「よろしく」とやっとそれだけ言った。 その犬の名前は「あで」 それからずっと俺は「あで」 草太はそう呼んだ。 だけど最近になって思う。 俺が犬なら、お前は猫だ。 わがままで自分勝手で自由奔放。 気まぐれ屋で俺に眼中もないかと思えば、思い出したように構ってくれとすり寄ってきたり。
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