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「は、馬鹿か。誰だよご主人サマはよ」
「俺」
「この野郎、シメる!」
「ふは」
冗談で掴んだ草太の後頭部を引き寄せて首を絞める真似事。俺が、ち、と鳴らした舌打ちに、草太は軽い口調で「冗談だって」と笑った。
でも俺は心中穏やかじゃない。
穏やかでいられるわけがない。
だって冗談じゃないからそんな言葉が出たんだろう。
俺がお前を忠犬みたいにずっと。見てんの知ってて、知らないふりしてきたんだろう。
「ちょ、あで、まじくるし…っ」
潤んだ目に見上げられて、どき、と跳ねた心臓に慌てて手を離した。
「ったく本気ですんなよなあ」
「……悪い」
お前が悪い。
そう言えない自分がもどかしい。
「あで、ばーか」
「うるせーよ。お前に馬鹿って言われる筋合いなんかねえ」
「なんでだよ」
「馬鹿って漢字で書けねーくせに」
「は、書けるしな」
うまとしかって書くんだろって言うからじゃあ鹿って書いて見ろよって言ったら草太はうっと言葉を詰まらせた。
ほらみろ。図星だ。
「授業中寝てばっかいっからそんな低俗な漢字も書けねんだよ」
「寝てねーよ」
「あーそう」
「信じてねーだろ」
「信じるかよ」
「授業中さ、あで黒板ばっか見てっからしらねんだよ。俺がなにしてんのか」
「だから寝てんだろ」
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