犬と猫と

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わざわざ振り返って見なくたって分かる。 だってお前って、寝てるときだけ大人しいんだよ。授業中騒がないのは意識がないから、だろう? 「ぶっぶー」 「はあ?じゃあなにしてんだよ」 「教えてほしい?」 「べっつに」 「しょーがねーなぁ。教えてやるよ。あで、回れ右」 前向いて黒板見てて、と肩を押されて、なすがまま俺は前へ向き直った。当然、俺からは草太がなにをしているのかなんて分からない。 「……草太?」 「…俺、いっつもこうやって見てんの」 なにを、と呟く。 俺の前には黒板とか、教卓とか。やっぱり草太は見えない。顔も目も見えないんだから、そしたらもう、言葉で知るしかない。 「あでの、な」 えりあし つ、となんの前触れもなく首の辺りに触れた草太の指先が冷たくて、びくりと肩が震えた。 「は、」 「襟から覗く肌ってエロいなぁとか。……ひいた?」 「……べつに」 「へー」 「…………」 「ふぅん」 「、草太、お前」 俺のことからかってんの。
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