犬と猫と

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言うつもりだった言葉は、後ろから伸びてきた草太の両手に遮られた。ぎゅ、と遠慮がちに首に絡んだ両腕と。呼吸の音が近い。ふわりと掠める草太の匂いは、女の子と違って全然あまくないのに俺は、くらくらと目眩を起こしそうだった。 いやそれよりも。この体制はやばい。かなりやばい。机を挟んでるとはいえ、草太が身を乗り出してる状態で密着するのはかなりまずい 「あほ、重てぇよ」 「うん、俺は重くない」 「当たり前だろ。どけ」 「やだっつったら?」 「…っふざけんな」 はやくどいてくれ。 さもないと、さもないとばくばくとうるさいくらい鳴るこの心臓の音が草太に伝わってしまう。 (落ち着け) おちつけ。 おちつけ、俺。 こんなの草太のいつもの冗談だ。 この抱擁に、意味なんかない。 自分に言い聞かせるようにきつく目を閉じる。 感じない何も感じない。夢だまぼろしだ。そう思おうとするのに。一層絡まる力が強くなる草太の腕が邪魔をする。雑念が混じる。 全部お前のためだってのに。 「あで、」 「なんだよ」 理性なんて、張りつめた糸のように細くて頼りないものだ。それを知っているはずなのに、草太、お前は一体どうしたかったんだ。 「俺のこと好きだろ」
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