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自動扉が開き、入ってきた男は定年退職を間近に控えた老人で、禿げ上がった頭にはうっすらと髪の毛が残っているだけ。 老人はおろおろと辺りを見回しながら受付へと向かうと、そこにいた真っ赤なスーツの似合う女に小声でそして早口にメッセージを伝える。 「ガートン美術館の館長をしております。サム・三上・ロックナーです、ルーベルト・ウィーガバンの作品についてお話したいことがありまして」 受付嬢は内容を確かめるとパソコンのキーボードをカタカタと叩き、 「承知しました。3階へどうぞ」 と営業スマイルで答えた。それ以上は何も語らず、サムは一人エレベーターに乗り込むと3階のボタンを押して溜息をつく。 「ああ…緊張で頭が痛い」 サムはエレベーターが止まるまで頭を抑え、また嘆息した。
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