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サムは丸まっている体をさらに丸めながら、スーツケースの中の資料を数枚取り出して目の前のテーブルの上に置いた。
「あの…」
「言わなくて結構…」
男は笑顔を浮かべながらサムの向かいのソファーに座り、そして資料には目もくれずにサムを見る。
見られたサムの方は今にも心臓が機能停止しそうになっている。
まるで蛇に睨まれた蛙状態。
それでもサムは頑張った。
ありったけの勇気を絞り出して、目に留まるように資料をずらす。
「あの…我がガートン美術館ではルーベルト作品をもっと世に残したいと思っていまして…」
「ふむ。それで?」
男はやはり資料を見ないでサムの顔色ばかりを見ている。
「で…ですから、ルーベルト作品は元々数が少ない上にそのほとんどが燃えてしまった…。お金はいくらでも払いますから!どうか美術館存続のためにも!作品を!!!」
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