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緊張と興奮で早口にまくし立てたせいか、一気に噴き出した汗は禿げ上がった頭をより輝かせて…
「まあまあ、落ち着きたまえ。契約は簡単だが、過去に戻るというのはとても大変でね。…知っていると思うが行動を起こすのは子供達なんだよ。我々のように年老いた者が過去と未来を行き来することは身体への負担が掛かりすぎる。だからこそ、身体能力の高い子供達を集めているわけでね」
「…はぁ」
そんな事は知っている。それゆえにこの機関がオリンポスと呼ばれている事も。
サムにとって会社の成り立ちはどうでも良く、天才画家と謳われたルーベルト作品を展示することで美術館離れしていく人々の心を繋ぎ止めたいのだ。
そのためには一刻も早い契約が必要で、資金も自分の長年の給金と退職金の前借りまでしてここに来ているのだ。
「…と言うわけだから、我々も気を付けはするのだが、もし…失敗したとしてもこちらに責任を問わないと言うことを理解して頂きたい」
「え!?」
それはあまりに無責任だと叫びたかったが、男の鋭い視線がそれを言わせない。
黙って頷く事しか出来ずにサムは震える手でサインを交わした。
出来ることなら成功してほしいと。否、何が何でも成功してくれと願いながらオリンポスを後にするのだった。
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