エピソード②

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宝箱の中には一通の封筒が入っていた。 18歳の絵奈へ ――絵奈、高校卒業おめでとう! 18歳の絵奈はどんな美人になっているかな? パパとママはとても楽しみだよ さて、宝箱の中身はもう見た? そう、絵奈名義の電子預金通帳です 絵奈は空っぽの宝箱を見た。 電波で取引を自動記帳出来る最新式でね パパとママはこの宝箱を買ってから毎月5000円ずつ口座に預金し続けてきたんだ 無闇に今おこずかいを上げるよりこうした方が将来、絵奈の為になると思って 絵奈は立ち上がると外へ駆け出した。 もし絵奈が大学に行くなら学費にしてもいいし 社会に出るならスーツもいいね それなりの額貯まってる筈だから何にでも使えると思います どうぞこれからに役立てて下さい 前を母と小さな絵奈が荷物を抱えて歩いている。 「お母さん!!」 母が気づいて振り返る。 「…宝箱の中身…盗ったの…お母さんでしょ…」 「は…?誰?アナタ――」 「返して…!!」 絵奈は母の肩を掴んで揺さぶった。 「ちょっ…!?何するの!?」 「返してよ!!ねえ!!私の為のモノなんでしょ!?」 小さな絵奈がワケもわからずオロオロと見ている。 「勝手に使わないでよ!!苦しいからって…………!!苦しいからって…愛情切り刻んで…使っちゃわないでよ…」 母が勢いに負けて何も言えずに絵奈を見た。 絵奈が大粒の涙をポロポロと流しながら母へ訴えかける。 「ねえ…お母さん!!私も…いつかお母さんになるんだよ…!?私に…ちゃんと子供の愛し方教えてよ…ッ!!」 18歳の絵奈を誰より思ってます パパとママより
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