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気がつくと目の前に白い天井があった。
ベットに横になっている俺にチェリー達が肉球を頭や体に押し付けていた。
ガバッ
俺は何が起きたのか理解できず起き上がった。
「あっ、そんな急に動かないで!しばらく目眩がありますよ」
俺は声のした方へ振り返った。ラブの肩にチェリーが乗っている。
「――いかがでしたか?過去のお探し物何か見つかりましたか?」
俺は目を静かに閉じた。
「いや…むしろ分からなくなった」
次の日、相澤澄の命日に俺は墓石の前に立っていた。
――澄…
今日で一周忌だぜ…。お前の墓前に立ってる俺は今、お前の事が何も信じられない…。
一体どれが…
何が本当のお前だったんだよ…。
その時ゆっくりとした足取りで、黒い服装に身を包んだオバサンが近づいてきた。
「どうもご苦労様です」
「!あ…どうも」
「澄さんのご友人?」
「あ…実は澄さんとお付き合いさせて頂いてた者で…えっと、そちらは?」
「あ、ホホ。申し遅れました。私、澄さんの父方の叔母で遠藤と言います」
父方の叔母…!
「澄ちゃん…彼女は親の為に本当に苦労の多い娘でしたね。離婚した母親とは仲悪くて、重病の父親を看病しつつまだ高校生の頃から医療費や生活費まで1人で工面して……。相当無理して色々な仕事もしてたみたいで」
医療費や生活費…!?
無理して色々な仕事……!!!
「…あっ!あの…っ!!!唐突に不躾ですみませんが…。彼女の父親の名前と…あと彼女の実家を教えて貰えませんか?」
「……桐谷さん、あなたの事。実は澄ちゃんから沢山聞いてましたよ。彼女は…生前こう言ってました。(もし父が元気で高校から人生やり直せたら、今頃カレと結婚して子供くらいいるかもね――)って」
……?
「澄ちゃんの父の名は「谷竜次」。実家は春日市旭町の鉄塔近くにある平屋の家ですよ」
――あの家だ……。
「父親からも解放されてこれからって時に…残念ですよ」
「…………」
遠藤という澄の叔母はそういうと去っていった。
答えを探すように俺は澄の墓前を見つめた。
「やむなく自分の家で売春してたら、そこを「自分の家」だと客相手に果たして言えますかね」
声をした方へ振り返るとパンダみたいな猫型ロボットのチェリーがいた。
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