冬の足音

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ちょっとだけ感情的になったが、衛兵はすぐに元に戻った。 さっきまでとは打って変わって一言も話す事なく、机と向かい合い帳簿に記帳している。 衛兵はニーサというキリギリスに会ったのだろうか。 今の様子では多分、ニーサというキリギリスと幼なじみのあいつが地雷としか分からない。 「キリギリスに女が居るっていつ知ったの?」 俺の問い掛けにやや面倒そうに顔を上げ、迷惑そうに視線を寄越す。 「門に立っている時にたまたま見たんだ。 女がニーサと呼んでいた、間違いない」 俺が口を開くより先に、聞かれると悟ったのか衛兵は即座に答えた。 「…死ぬ前に?」 「あぁ」 「何故伝えなかったの? そしたら救えたかも…」 「…俺は伝えた。 なのにあいつは笑っただけで何にも…」 「そのままにしてたの?!」 「女王にひざまづけば今なら出してやれると言った!!だけどあいつ今度は笑いながら二度首を横に振って…それっきり」 頑としてひざまづかなった…?キリギリスに裏切られたのに、選択次第では生きれたのに、何が彼をそうまでさせたのか? .
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