震える灯

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衛兵は困った時とか隠し事をする時などに煙草を吸う。 ごまかしか、考える時間を稼いでいるのか。 どちらにせよそれから同じ話を続けるのは無理だ。 「雪って…どれくらい積もってたの?」 「さぁな…大体窓のとこまでだったか?」 煙を吐き出し、虚空を見詰めた後何も言わず煙草を揉み消した。 「変わりの時間じゃ」 年の行ったじい様が上から降りてくると衛兵はこちらを向かないまま階上へと向かった。 「じい様、雪はどれくらい積もってました?」 「1m位じゃ。 ほっほっ、久しぶりじゃの。そこの牢に人が入るのは」 「久しぶり…?」 「聞いとらんかの?昔あやつの思い人がそこにおったんじゃ。 そやつが朽ちてからそこには誰も入れなくなってのぉ。」 思い人。 じい様から聞いた言葉は幾らか衝撃的なものだった。 思い人が入っている牢を自分が見張る。 その上、その人は自分を見ないまま死んでしまった。 「きついですね」 「餌を与えても受け取らんかった。あやつは毎日泣きそうな顔して牢の前に立って話掛けておった。 見てるだけでわしらは胸が裂けそうじゃったよ」 「あの人が…」 .
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