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どれくらい歩き続けたのだろうか。見慣れない景色が目の前には広がっている。
正に知らない世界。
歩き続け足はへとへと、暑い中歩いた体はべたべた。
ありきたりな毎日から逃げ出したつもりだった。なのに…。
何も変わらない。
一人ぼっちになっただけ。
「……らぁー♪」
「………歌?」
軽快なギターの音色と共に優しく思わず聞き惚れてしまいそうな声が耳に届いた。
知らず知らず音のする方に足が赴く。
―――…ガサッ
踏んだ枯れ葉音が音を立て砕け散る。それと同時に声が止み、鋭い視線をこちらへ寄越してくる。
「……誰?」
「……あ…」
「…ん?その服、ここの近くに居るアリのだな?迷子か?」
ギターを置き、男はにこやかな笑顔で近付いてくる。
目鼻立ちがはっきりしていて、プラチナの髪に深い海の底のような瞳。とても目を惹かれる顔立ちだ。
「…貴、方は?」
「キリギリスのレギー。君は?」
「俺は働きアリのアマネです」
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