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衛兵に腕を取られ、暗い地下牢へと連れられて行く。
「…レギーに会わなきゃ」
「キリギリスにはもう会えないぞ」
「……レギー…」
もうすぐ本格的な冬となる。
冬支度をしていないレギーがこの過酷な冬を越せるのだろうか。
いや、越冬する場所はあるのか?
いつもいつでもレギーはあそこに居た。もしかしたら家なんてないのかも知れない。
「入れ」
松明の灯で照らされた薄暗い地下に並ぶ鉄格子。その一つの扉を開け衛兵は背筋を正し止まっていた。
俺は静かに扉の中へと踏み入れた。重たい音を響かせ鉄格子が閉まる。
「衛兵…今年の冬も雪が降る?」
「例年通り豪雪だ」
「…そう…
レギーは夢がたくさんあるんだって」
「キリギリスならそうだろう。
夢心地で地に足着かない遊び人どもだ」
「…俺は素敵だと思うな…。
自分の夢があって、自分の好きな事を好きな様にしているんだから」
衛兵は女王同様に哀れみの眼差しを俺に向け、小さく首を振った。
「キリギリスに逆上せる奴ら皆同じ事を言う」
小さく溜息混じりに呟いた衛兵は近くの椅子に腰掛け、鍵を投げた。
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