冬の足音

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「お前ら裏切り者は惨めに生きて行くだけだ」 「いつ冬はくる?」 「………… 3日後には雪が降るそうだ」 3日後……。 冷え込みが激しくなれば外での生活は困難にも等しい。 例えレギーが越冬できたとて、春に会えるとは限らない。 ここは地下牢。 暖房器具は一切なく、暖かい物など出して貰えるはずもない。 牢屋とは名ばかりにここは死刑場だ。 ここで何人ものアリ達が飢えに苦しみ、寒さに凍え、水を欲した。屋敷に置かせて貰えていた有り難さ、食料などの大切さを思い知らされながら死に行くのを待つのだ。 それが裏切り者の末路。 行く末なのだ。 助かる術はある。 だが、それは俺が一番嫌な事。 「お前も音を上げ、女王にひざまづくのがオチだ」 「……ひざまづくものか。この身滅びようとも決して屈したりはしない」 「……最初は誰でもそう言う」 衛兵はそっぽを向くと煙草に火をつけ大きく吸い込み、ゆっくり紫煙を吐き出した。 物思いに耽り、疲れきった表情には何の感情も映らない。 「お前と似た奴がいた。最後まで女王に屈しず、苦しいと一言も言わないで死んでいった。 …あぁそういえば最後にキリギリスの名前を言ってたな。」 .
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