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「そうだ!110番っ!!」  自分の会心のアイデアに思わず喝采を送りたくなるのを自重し、慌てふためき受話器を取ると勢い余ってお手玉をする。 「うぉっととっ……」  不器用に手の中に収めたそれを耳に当て、ボタンを押そうとした瞬間、はたと気付いて伸ばした指をピタリと止めた。 「……110番って、何番だっけ?」  とてつもなく重要な事を忘れてる気もするが、それが何なのかどうしても出てこない。喉の奥に小骨が引っ掛かったような感じでイライラする。  ジャーー…………      ゴボゴボゴボゴポポッッ  受話器を片手にイライラと頭を掻きむしっていると、前触れ無く聞こえてくるトイレを流す水の音。  ――誰か居るっ!?  直感が確信へと変わる。  ドアの開閉の音に続く足音。重なるようにカチャカチャと金具が鳴っている。今気付いたが、目の前にドアが一枚。そのノブがぐるりと回る。
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